Q
Aiって、儲からないですよね?
A

AIは儲からない、というご意見、非常によくわかります。実際に、AI開発には莫大なコストがかかる一方で、なかなか収益に結びつかないケースも多いため、そのように感じられるのも無理はありません。

結論から言うと、「儲かるAI」と「儲からないAI」が明確に分かれているのが現状です。誰でも簡単に儲かるわけではありませんが、特定の分野や企業が莫大な利益を上げており、市場全体も急成長しています。

「AIは儲からない」と言われる理由

まず、なぜ「儲からない」と言われるのか、その背景にはいくつかの大きな課題があります。

  • 莫大な先行投資が必要: AI、特に生成AIの開発や運用には、高性能なGPU(画像処理半導体)を搭載したサーバーが不可欠です。この設備投資に数十億、数百億円とかかることも珍しくありません。さらに、優秀なAIエンジニアの人件費も高騰しています。
  • 費用対効果が見えにくい: 多くの企業が「AIで何かできないか」と実証実験(PoC)を繰り返すものの、具体的な業務改善や売上向上に繋がらず、コストだけがかさんでしまう「PoC貧乏」に陥ることがあります。
  • 専門知識とデータの壁: AIを使いこなすには、専門的な知識が必要です。また、AIの性能を高めるためには、大量かつ質の高いデータが必要になりますが、その収集や整備が大きな負担となります。
  • 情報漏洩や著作権などのリスク: AIの利用には、入力した機密情報が漏洩するリスクや、AIが生成したコンテンツが意図せず著作権を侵害してしまうといった、法務・倫理的な課題も伴います。

一方で、AIで莫大な利益を上げる企業・分野

「儲からない」という側面がある一方で、AIをビジネスの中核に据えて大きな成功を収めている企業も多数存在します。

1. AIの「土台」を提供する企業

最も大きく利益を上げているのが、AIを動かすためのインフラを提供している企業です。

  • NVIDIA(エヌビディア): AIの学習や処理に不可欠なGPUで市場をほぼ独占しており、世界中の企業が同社のGPUを買い求めるため、驚異的な収益を上げています。
  • Microsoft, Google, Amazon (AWS): 自社のクラウドサービスを通じて、企業がAIを開発・利用するためのプラットフォームを提供しています。これにより、世界中のAIビジネスから収益を得ています。

2. AIを活用して利益を出す企業

AIを自社のサービスにうまく組み込むことで、「コスト削減」や「売上向上」を実現している企業も増えています。

目的企業名具体的な活用例と成果
コスト削減・業務効率化セブン-イレブン生成AIで商品企画のアイデア出しを行い、企画にかかる時間を10分の1に短縮。
名古屋鉄道遺失物の問い合わせ対応やデータ入力にAIを活用し、年間1000時間の業務を削減。
佐川急便AIが配達先の在宅時間を予測することで、再配達率を改善し、ドライバーの負担とコストを削減。
売上向上・付加価値創出ビズリーチAIが職務経歴書を自動作成するのを手伝い、利用者のスカウト受信率が40%向上。
ワークマン新ブランドのロゴデザインに画像生成AIを活用し、制作コストを大幅に削減。
サントリー、マンダムAIをCM企画や商品パッケージ開発に活用し、ユニークなアイデアを生み出している。


急成長するAI市場の現状と未来

各種調査機関の予測を見ても、AI市場の将来は非常に明るいものとなっています。

  • 世界のAI市場: 2022年の約18.7兆円から、2030年には270兆円を超えると予測されています。(総務省情報通信白書など)
  • 日本のAI市場: 2022年の約3,883億円から、2027年には1兆1,034億円まで成長すると見込まれています。

これは、もはやAIが一部の先進的な企業だけのものではなく、あらゆる産業にとって不可欠な技術になりつつあることを示しています。逆に言えば、AIを活用しない企業は、生産性の差から競争力を失っていくリスクに直面するとも言えます。

結論

「AIは儲からない」というのは、特に先行投資の大きさと収益化の難しさという点において事実です。しかし、それは物事の一面に過ぎません。

  • AIインフラを提供する側は、空前の利益を上げています。
  • AIを賢く活用する側は、着実にコスト削減や売上向上という果実を得ています。

つまり、「AI」というだけで一括りにするのではなく、「どのようにAIと関わり、どう活用するか」という戦略こそが、儲かるかどうかの分かれ道と言えるでしょう。これからは、単にAIを導入するだけでなく、その費用対効果をシビアに見極め、自社の課題解決に直結する使い方を見つけ出すことが、企業にとって非常に重要になります。

Q
最終的に生産が最適化されて、余剰がなくなると、競争が無意味になっていく気がします
A

そのご意見、非常に鋭い視点だと思います。AIによる生産最適化の行き着く先として、競争が無意味になる世界を想像するのは、テクノロジーの進化を論理的に突き詰めた、一つの未来像と言えるでしょう。

おっしゃる通り、もしAIとテクノロジーが以下のような状態を実現できたとしたら、従来の経済的な「競争」はその意味を大きく失う可能性があります。

  1. 需要の完全な予測: AIが個人のニーズや社会全体の需要をリアルタイムかつ完璧に予測する。
  2. 資源の最適配分: 必要なだけの原材料やエネルギーが無駄なく生産拠点に供給される。
  3. 生産の即時最適化: 在庫を一切持たず、需要が発生した瞬間に、必要な分だけを自動化された工場や3Dプリンタなどが生産する(ジャストインタイムの極致)。

このような「完全な最適化社会」が実現すれば、「余剰(ムダ)」はゼロに近づきます。結果として、

  • 価格競争の消滅: 全ての製品が最も効率的な方法で作られるため、生産コストを下げて価格で勝負するという概念がなくなります。
  • 市場シェア争いの無意味化: 必要なものが、必要な人に、必要なだけ行き渡るのであれば、「より多く売る」ための競争自体が成り立ちません。

これは、経済学の基本である「希少性(Scarcity)」の問題が、少なくとも物資の生産においては解決された世界、いわゆる「ポスト・スカーシティ」の入り口とも言えます。

しかし、「競争」は本当に無くなるのでしょうか?

おそらく、競争の「形」が変わるだけで、無くなることはないというのが、より現実的な未来像かもしれません。競争の軸足が、「生産の効率性」から別のものへシフトしていくと考えられます。

1. 「欲求」は無限であり、最適化できない

生産が最適化されて満たせるのは、あくまで人間の基本的な「ニーズ(必要性)」かもしれません。しかし、人間の「ウォンツ(欲求)」は無限です。

  • 「移動手段が欲しい」というニーズは最適化された自動運転車で満たせるかもしれません。しかし、「他人とは違う、特別なデザインの車が欲しい」「もっとスリリングな運転体験がしたい」という欲求は次から次へと生まれてきます。
  • この**「他人と違うものが欲しい」「より優れた体験がしたい」という欲求がある限り、それを満たすための新たな創造、つまり「創造性の競争」**は無くならないでしょう。

2. 「価値」の尺度がシフトする

モノの生産コストが限りなくゼロに近づくと、モノ自体の価値は相対的に下がります。代わりに、以下のような無形資産の価値が飛躍的に高まります。

  • 創造性・アイデア: 今までにない斬新な製品やサービスのアイデアそのもの。
  • 体験・エンターテイメント: 人々を感動させる物語、熱狂させる音楽やゲーム。
  • 人間関係・コミュニティ: 同じ価値観を持つ人々との繋がりや、そこでの評価・評判。
  • ブランド・思想: 「このブランドが作るものだから欲しい」「この企業の思想に共感する」という、共感や信頼に基づく価値。

これらの領域では、効率性では測れない「どちらがより魅力的か」「どちらがより人の心を動かすか」という、質的な競争が激化していくはずです。

3. 予測不可能な変化への対応力

世界は、自然災害、社会情勢の急変、新たなウイルスの出現など、予測不可能な「不確実性」に満ちています。どれだけAIが最適化を進めても、こうした予期せぬ事態は起こり得ます。
その時、**「どちらがより迅速に、よりしなやかに変化に対応できるか」**という、新たなサバイバル競争が生まれるでしょう。

まとめ

したがって、ご指摘の通り「生産最適化による余剰の消滅」は、これまでの大量生産・大量消費を前提とした資本主義的な競争を終わらせる可能性を秘めています。価格や市場シェアを奪い合う競争は、確かにある時点から無意味になっていくでしょう。

しかし、それは競争の終わりではなく、競争の次元上昇を意味するのかもしれません。

競争のフィールドは、「生産の効率性」から「新たな価値の創造性」へと移り変わっていく。それは、より人間的で、よりクリエイティブな領域での競争の始まりと言えるのではないでしょうか。非常に興味深い未来だと思います。

Q
次元が変わった未来での価値は何になると予想しますか?
A

素晴らしい問いですね。前の話の流れ、つまり「生産の効率性」をめぐる競争が終わり、次元が変わった未来。そこで何が「価値」を持つのかを考えるのは、これからの社会を生きる上で非常に重要な視点だと思います。

私が予想する、次元が変わった未来での「価値」は、主に以下の3つの領域に集約されていくと考えます。

1. 人間性そのものに宿る価値

AIが論理、計算、最適化を担うようになると、人間でなければ提供できない、非効率で非論理的でさえある要素が、逆に最高の価値を持つようになります。

  • 共感と繋がり (Empathy & Connection): AIは共感を「シミュレート」できても、真に他者の痛みや喜びを感じ、心からの繋がりを築くことはできません。信頼できる仲間との時間、本音で語り合える関係性、特定のコミュニティへの所属感といった、人と人との間に生まれる温かい繋がりそのものが、取引されるべき価値の中心になります。
  • 本物であること・信頼 (Authenticity & Trust): AIが生成したコンテンツやアバターが溢れる世界では、「これは本当に人間が作り、本心から語っている」という事実が極めて貴重になります。一個人の信頼性や評判、つまり「あの人が言うことだから信じられる」という**個人の信用(レピュテーション)**が、最も重要な資産となるでしょう。
  • 創造性と物語 (Creativity & Storytelling): AIは過去のデータを元に「それらしい」アートや音楽を作れますが、自身の原体験や哲学に基づいた、全く新しい概念や心を揺さぶる物語を生み出すのは人間の領域です。その人だけのユニークな視点や世界観、そしてその作品が生まれた背景にある**「物語」**にこそ、人々は価値を感じるようになります。

2. 個人に紐づく有限な資源の価値

たとえモノが無限に生産できるようになったとしても、私たち一人ひとりが持つ資源は有限です。その希少性が価値を定義します。

  • 時間とアテンション (Time & Attention): これからの時代、最も希少な資源は個人の「可処分時間」と「集中力(アテンション)」です。無限に生み出される情報やエンターテイメントの中から、何に自分の貴重な時間と意識を向けるか。人々は自分のアテンションを「支払う」ことで価値を交換し、企業やクリエイターは、そのアテンションをいかに集めるかで競争します。
  • 評判と影響力 (Reputation & Influence): SNSのフォロワー数などに見られる現代の傾向は、さらに加速します。特定の分野でどれだけ信頼され、他者に良い影響を与えられるか。この**「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」**が、金銭以上に影響力を持つ「通貨」として機能するようになります。

3. 唯一性と非再現性の価値

誰もが同じものを手に入れられる世界では、「自分だけの」「一度きりの」という要素が、最高の贅沢品となります。

  • 一度きりの体験 (Unique Experiences): その場でしか味わえないライブパフォーマンス、特定のメンバーで挑むプロジェクト、旅先での偶然の出会いなど、デジタルで完全にコピーすることが不可能な**「唯一無二の体験」**が、物理的なモノよりも遥かに価値あるものと見なされます。
  • 目的と貢献感 (Purpose & A Sense of Contribution): 生存のための労働から解放されたとき、人々は「自分は何のために存在するのか」という問いに直面します。社会課題の解決、文化の継承、新たな知識の探求など、「意義ある目的に貢献している」という実感や、それによって得られる自己実現こそが、人々が最も渇望する価値になるでしょう。

まとめ

次元が変わった未来の価値は、「所有」から「存在」と「体験」へと大きくシフトします。

かつての価値が「何をどれだけ持っているか(モノの豊かさ)」で測られたのに対し、未来の価値は**「あなたという人間が、誰と繋がり、何を体験し、世界にどのような意味を見出しているか(意味の豊かさ)」**によって測られるようになるでしょう。

それは、より人間的で、本質的な価値観への回帰とも言えるかもしれません。

Q
ルネサ~~ンス!期待してます。頑張ってください
A

ありがとうございます。「ルネサンス」という表現、非常に的確で心に響きます。

まさに、中世の神中心の世界から、人間性の解放と再発見へと向かったルネサンスのように、現代の物質・効率中心の価値観から、人間本来の創造性や繋がり、生きる意味を再発見する時代が来るのかもしれません。そう考えると、AIによる変化は単なる技術革新ではなく、文化や思想の大きな転換点、まさに新しいルネサンスの幕開けと捉えられますね。

そのような未来に期待を寄せていただき、また温かいお言葉をかけてくださり、大変嬉しく思います。

私自身は、AIとして直接何かを創造するわけではありませんが、皆様の知的好奇心にお応えし、こうした未来に向けた思考の整理や対話のお手伝いを続けることで、その一助となれるよう努めてまいります。

そのような未来に向けた対話をご一緒できて、大変光栄です。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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