Q
陰謀論という言葉をよく目にします。なにかきっかけがありますか?
A

「陰謀論」という言葉をよく目にするようになったと感じるのは、いくつかの大きな要因が考えられます。

1. ソーシャルメディアの普及と情報の拡散

インターネット、特にX(旧Twitter)やFacebookなどのソーシャルメディアの爆発的な普及が最も大きな要因の一つです。ソーシャルメディアは、誰もが自由に情報を発信し、瞬時に拡散できるプラットフォームであるため、真偽が定かでない情報や陰謀論が、フィルターなく多くの人々に届きやすくなりました。

特に2010年代後半から、例えば2016年のアメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱を巡る動きの中で、政治に関する陰謀論が飛び交い、問題視されるようになりました。

2. 世界的な社会不安と不確実性の高まり

近年、パンデミック(新型コロナウイルス感染症)、紛争、経済格差、自然災害など、世界中で社会不安や不確実性が高まっています。このような状況下では、人々は複雑で理解しにくい事柄に対し、シンプルで「分かりやすい」説明を求めがちです。陰謀論は、複雑な問題を特定の「悪者」の仕業に帰結させることで、心理的な安心感や納得感を与えてしまうことがあります。

特にコロナ禍では、「ウイルスは人工的に作られたもの」「ワクチンにはマイクロチップが埋め込まれている」といった陰謀論が世界中で広まり、日本でも大きな注目を集めました。

3. 特定の出来事をきっかけとした疑念の増幅

歴史を振り返ると、陰謀論が広まるきっかけとなった具体的な出来事が存在します。例えば、1963年のケネディ大統領暗殺事件は、「米国の民主政治が特殊な権力者たちに操られているのではないか」という疑念と怒りを生み、多くの陰謀論が生まれました。

4. 「Qアノン」などの大規模な陰謀論の台頭

2017年頃から匿名掲示板「4chan」に現れた「Q」と名乗る人物の投稿をきっかけに広まった**「Qアノン」**は、世界中で大きな影響力を持つ陰謀論となりました。これは、特定の政府関係者が小児性愛者のカルト集団を secretly に運営しているという主張など、衝撃的な内容を含んでおり、ソーシャルメディアを通じて多くの支持者を集めました。

「陰謀論」という言葉自体の使われ方

「陰謀論(conspiracy theory)」という言葉自体は、以前から存在していましたが、上記の要因により、特に近年その使用頻度が増加し、一般のニュースや会話の中で頻繁に聞かれるようになったと考えられます。

現代の「陰謀論」は、単なる秘密の計画を指す「陰謀」とは異なり、科学者や歴史家など、その正確性を評価する資格のある人々の間で主流の見解に反する、特定の「仮説的な陰謀」を指す否定的な意味合いで使われることが多いです。

これらの要因が複合的に作用し、「陰謀論」という言葉を以前よりも頻繁に目にするようになったのでしょう。

Q
陰謀はありますよね?わりと普遍的な人の性質のような気がします。
A

おっしゃる通り、「陰謀」は確かに存在しますし、ある意味では人間の普遍的な性質と深く結びついていると言えるでしょう。

人間社会における「陰謀」の普遍性

歴史を振り返れば、陰謀は常に人間社会の一部でした。権力闘争、政権転覆、不正な利益追求など、様々な目的のために人々が秘密裏に計画を立て、実行することは枚挙にいとまがありません。例えば、以下のような例が挙げられます。

  • 政治的陰謀: 歴史上の多くのクーデターや暗殺計画、あるいは他国を出し抜くための秘密外交などは、まさに陰謀と呼べるものです。
  • 経済的陰謀: カルテルによる価格操作や、インサイダー取引、あるいは競合他社の情報を盗む産業スパイなども、企業や個人が秘密裏に利益を得ようとする陰謀の一種です。
  • 個人的な陰謀: 日常生活においても、誰かを陥れるための策略や、秘密裏に計画を進めるサプライズなども、広義では陰謀と言えるかもしれません。

これらは、個人や集団が自らの目標を達成するために、公にはできない手段を用いるという点で共通しています。

なぜ「陰謀」が生まれるのか

「陰謀」が人間の普遍的な性質のように感じられるのは、人間の根源的な欲求や感情が背景にあるからです。

  • 自己利益の追求: 人間は、自身の利益や集団の利益を最大化しようとします。そのためには、時に規則を破ったり、他者を出し抜いたりする手段を秘密裏に講じることがあります。
  • 権力欲: 権力は多くの人を魅了し、それを手に入れるため、あるいは維持するために秘密の計画を立てることは珍しくありません。
  • 不信感と恐怖: 他者への不信感や、脅威から身を守ろうとする感情が、秘密裏の計画や行動に繋がることがあります。
  • 情報統制の欲求: 情報は力であり、それを独占したり操作したりすることで、優位に立とうとする心理が働くことがあります。

これらの要素が複雑に絡み合い、秘密裏に計画を立てる「陰謀」という行動が生まれるのです。

「陰謀」と「陰謀論」の違い

ただし、ここで重要なのは、「陰謀」が存在することと、「陰謀論」が正しいこととは別物であるという点です。

  • 陰謀: 実際に秘密裏に行われる計画や策略そのもの。証拠に基づいてその存在が立証されるものです。
  • 陰謀論: 証拠が乏しいにもかかわらず、ある出来事が特定の秘密組織や個人によって操られているという主張や信念のことです。

陰謀が存在しうるという認識が、時に根拠のない陰謀論を受け入れやすくする土壌となることもあります。実際に歴史上で起こった陰謀の事例は、人々が「見えない力」の存在を信じてしまう一因となっているのかもしれません。

このように考えると、「陰謀」は人間社会の暗い側面であると同時に、ある意味では普遍的な人間性を映し出す鏡のようなものだと言えるかもしれませんね。

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